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36905円

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〜生活をカラフルamp;オシャレに〜
サイズ(cm):
幅:41
奥行き:41
高さ:15

素材:陶器

取付について:取付工事はお近くの工務店様にご相談してください


< 重量物なので同梱はできません >


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サワフタギの花と果実



近くの雑木林で、サワフタギSymplocos sawafutagiが青い果実をつけていた。サワフタギは、この美しい果実から、ルリミノウシコロシ(ウシコロシとは物騒な名だが、よく似た葉を持つバラ科のカマツカの別名)やサファイアベリーと呼ばれることもある。花は初夏に、たくさん咲いていたのだが、なぜか結実しているものは少なかった。

サワフタギの属すハイノキ科はハイノキ属Symplocos1属からなり(ミヤマシロバイ属を独立した属と認める見解もある)、アジアやオセアニア、南北アメリカの主に熱帯、亜熱帯域に約300種がある。ほとんどが常緑性の種で、サワフタギのような落葉性の種はごく少数である。

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開花は5月初め頃で、たくさんの白い花を、頂生する円錐花序に付ける。花もとても美しく、園芸植物としても利用される。



花にはたくさんのハナムグリやコガネムシがやってきていた。蜜を舐めるためと思われるが、中には交尾しているものもいて、雄と雌の出会いの場所にもなっているのかもしれない。



花は直径8mmほどでかたまって付く。



花には多数の雄しべがあり、開いた花冠を被うように突き出して、やくに黄色い花粉を付けている。この雄しべは基部で複数本が癒着し、花冠の基部に合着している。ハイノキ属の学名のSymplocosは、ギリシャ語で“複合している”という意味で、癒着した雄しべの形に由来する。中央に雌しべが1本、突き出している。花びらの上には蜜と思われるものが光っている。



側面からみた花。5枚の花弁は基部で合着し、その外側に小さながく片が見える。子房下位である。



果実の拡大。陶器のような輝きのある青色が美しい。表面には剛毛がまばらに生えている。頂部にくちばしのように見えているのは、残っているがく片である。



側面から見た果実。下側に見える果柄との位置関係からもわかるように、果実は必ず微妙に歪んでいる。この微妙な歪みと先端に残るくちばし状のがく片がハイノキ属の果実の特徴である。



果肉を除去して果実の内部を見たところ。中央に見えるのは種子では無く、硬化した内果皮すなわち核である。核の先端に、枯れた雌しべの花柱が見えている。青色を呈するのは、外果皮だけで中果皮は白色であることがわかる。



取り出した核。扁平な巾着袋のような、不思議な形をしている。頂部に見える環状の部分は花冠やがく片の付いていた跡で、その内側の平坦な部分は花床ということになる。



核を縦方向に切ると、底側に曲がった種子が1個だけあり、その上側は中空になっている。種子には胚乳が多く、左側の断面には胚も見えている。

サワフタギの美しい青色の果実には、何か意味があるのだろうか。同じような美しい青色の果実は、北米のガマズミ属の一部の種(トキワガマズミなど)でも知られている。ガマズミ属では果実の色と成分との対応関係が網羅的に調べられ、青色の果実は赤色や黒色の果実に比べ、水分が少なく油(脂質)の占める割合が高く、高カロリーであることがわかっている。このため、果実の青色は、鳥類の中でも長距離を移動するために特に高カロリーの食物を必要とする渡り鳥を惹きつけ、種子を遠くまで運んでもらうためのサインとして機能しているのではないかという仮説が考えられている。

サワフタギに近縁で、同種として扱われることもあるSymplocos paniculata(日本固有のクロミノニシゴリの学名として使用されるが、韓国や中国、ヒマラヤ、インドシナに広く分布するSymplocos chinensisの学名として使用されることも多い)もオイル植物として有名で、果実から搾ったオイルは食用、薬用とされ、バイオ燃料としての活用も検討されている。インドの伝統的医学であるアーユルヴェーダにおいても、ハイノキ属の果実から絞ったオイルが使われる。サワフタギの青色の果実にも、ガマズミ属の青色の果実と同様に、脂質が多く高カロリーであることをアピールする機能があるのかもしれない。また、陶器のような美しい輝きにも、外果皮に油細胞や油滴が含まれていることが関係していそうである。
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クワクサの花と実





庭の片隅に、クワ科の一年草であるクワクサFatoua villosaが生えてきた。風媒花を着け、弾発型の花粉放出(爆弾が破裂するように勢いよく花粉を飛ばすこと)と種子の自発散布を行うことが特徴である。詳しく観察したことは無いので観察してみた。



上側から見た植物。クワクサの名は葉が桑の葉に似ていることに由来するのだと思うが、それほど似ていない。1年草なので、草丈や葉の大きさなどは変異が大きい。



葉の裏側にはたくさんの腺点がある。



植物は上に伸びながら葉腋に球状の花序を1個ずつ着ける。花序の脇からさらに短いシュートを出して花序を着けることもある。花序は雄花と雌花が混じる両性花序であるが、最初に雌花が開き、次いで雄花が開く雌性先熟性を示し、同一花序内では雌と雄は時間的に分離しているように思われる。この写真で茎の上部に着いている小さな花序が雌性期にあり、茎の中部にあるやや大きな花序が雄性期にある。



雌性期にある花序。まだ直径3mmほどの小さな状態である。赤紫色の柱頭が多数、突き出している。柱頭や花序の形状は、2019/4/27のブログで紹介したヒメコウゾ(クワ科)の雌花序に似ている。一つの雌花に柱頭は1本だけなので、柱頭の数だけ雌花が着いていることになる。所々に、緑色をした球状の未熟な雄花が見える。花序の茎やがくの表面には腺毛がたくさん生えていて、触ると少し粘つく。



直径5mmほどに成長し、赤味を帯びた花序。球状の雄花に対し、雌花はやや扁平であることがわかる。がく片(花被片)の隙間から柱頭が突き出している。がく片の枚数は雄花、雌花ともに4枚である。この状態にある雌花の内部を見ると、次の写真に見るようにすでに種子が成長を始めている。



成長途中の雌花を解剖して内部を見たところ。手前側の2枚のがく片は除去してある。中央にある扁平でやや歪んだタネの縁を左右から緑色の組織が包んでおり、左側に赤紫色の柱頭が伸びているのがわかる。緑色の組織は外果皮、タネは内果皮でと種子である。すなわち、本種の果実は痩果と記載されていることが多いが、核果(石果)と呼んだ方が正確であると思われる。おそらく、核が成長していく過程で、外果皮は2つに割れて、このような姿になるのだと思われる。



直径1cmほどに成長し、雄花が開き始めた花序。球形の雄花の隙間から、花序に残る雌花の柱頭が突出している。花序の右下の開きかけの雄花から分かるように、雄しべの花糸は4本あって太く、蕾の中で、がく片に押し付けられるようにして中部で内側に曲がり、やくは下向きになっている。しばらくすると、やくが開き初め、雄しべの花糸が反り返るように伸びて、その勢いで、開いたやくから花粉が空中にパッと放出される仕組みである。採取してきた植物を机の上で観察していると、時々、煙を吐くように白い花粉を放出するる様子を見ることができる。短時間のうちに、雄しべが次々と伸びていく様子を、以下の一連の写真で紹介する。



1枚目:まだ伸びている花糸は無い。



2枚目:約15秒後、花序下側の花糸が伸びて花粉を放出した。



3枚目:さらに約2分半後、花序右側の花糸が伸びて花粉を放出した。



4枚目:さらに6分後の花序。10本以上の花糸が伸びて花粉を放出し終えている。よく見ると花糸の上半分には、窪んだ横縞がついている。押し曲げられていた時についた跡で、曲げられたバネが伸びるように、この部分が伸びることで花糸が動くのである。



花粉を放出後、何日か経過していると思われる花序。伸びた雄しべは、そのまま分離、脱落してしまうのでは無く、再度、内側に曲がって、閉じたがく片の内部に収納されてしまう。おそらく、この後、雄花自体が分離、脱落するのだと思われる。



その後、雌花の内部でタネ(核)が成長し、黄褐色に変化して、がく片の隙間から姿を現す。



雌花の内部で成長したタネ。内部が見えるように手前側の2枚のがく片は除去してある。タネ(核)の表面には、いぼ状の突起が発達している。また、よく見ると柱頭の基部右側に小さな突起が出ている。ヒメコウゾの柱頭と同じように、もう1本の柱頭が痕跡化して残っているのだと思われる。この段階で、外果皮はタネを左右から挟むように保持しているが、ピンセットで突くと、核がピンと飛び出すことがあるので、外果皮は成長するタネに押し広げられて、かなりテンションがかかった状態にあると思われる。そのため、タネがこれ以上に成長すると、外果皮からはずれ、閉じる内果皮に押されて上方に飛び出すのだと考えられる、しかし、散布距離はさほど大きくなく、多くは植物体の周辺に散布されるだけだろう。



成熟したタネ(核)。直径0.8mmほどの、芥子粒のようなタネである。やや扁平な3稜形をしている。表面に凹凸があり、握り飯のように見える。

クワクサ属は世界に3種だけがある小さな属で、木本植物が大半を占めるクワ科には珍しく草本、しかも1年草という変わり者である。クワ科の草本植物は、他にはドルステニア属Dorsteniaが知られているだけである(2018/7/26のブログで紹介)。クワクサ属は小さな属で系統もよくわかっていないが、ドルステニア属やコウゾ属Broussonetiaに、比較的、近縁なようだ。

本種で見られるような弾発型の花粉放出は、クワ科では一部の植物に限られるが、近縁のイラクサ科やアサ科では広く見られるもので、その仕組みも本種と似たものであることが知られている(Pedersori et al. 2019)。他の種では、雄花の中央に退化した雌しべが突起として残り、花糸が開かないように、やくを押して支えていることが知られているが、本種では雄花の中央に突起は無く、多数の毛(おそらく粘液を出す腺毛)が生えているだけである。可能性としては、この粘着力によって、やくを引き留めているのかもしれない。やくの成熟が進み、裂け目が入ってやくが萎むと、この接着力が弱まってやくが外れ、爆発的に花糸が伸びるのではないだろうか。しかし、花糸の外側には頑丈ながく片があって花糸の外側への動きを押しとどめるため、花粉だけが高速で投げ出されることになる。

タネの自発散布の仕組みもユニークなもので、似た仕組みを持つ植物は思いつかない。身近にあって地味な植物だが、いろいろとわからないことの多い植物だ。

Pedersori et al. (2019) Anatomy solves the puzzle of explosive pollen release in wind-pollinated urticalean rosids. Amerrican Journal of Botany 106: 489–506.

戸隠高原の森と植物




5月末に、少し遠出してハイキングに出かけてきた。場所は戸隠高原。ここは高原の南東に位置する第四紀火山の飯綱山と北西に位置する戸隠山の間に開けた海抜1200~1300mほどの平坦地で、地形的には2つの山の扇状地および火山である飯縄山からの岩屑なだれ堆積物によって構成されている。



硯石から見た北アルプス。 右側から白馬鑓ヶ岳、唐松岳、五竜岳、鹿島槍ヶ岳の眺望。残雪が多い。



小鳥ヶ池~鏡池間のカラマツ植林。この辺りは岩屑なだれの堆積物に被われ、なだらかな起伏のある地形である。



小鳥ヶ池~鏡池間の森林。ミズナラとウラジロモミが多い。



マイズルソウ(キジカクシ科スズラン亜科)の白い花が咲いていた。左下はウラジロモミの実生。



ユキノシタ科のズダヤクシュも花盛りだった。ズダヤクシュは日本のブナ帯や亜高山帯では比較的、普通な植物だが、アジアには1種ズダヤクシュだけが日本からヒマラヤにかけて分布するだけである。北米に同属の4種があり、植物地理学的に興味深い植物である。近年の研究によればチャルメルソウ属に近縁であるという。



花は小さいがよく見ると美しい。

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鏡池(人造湖)から見た戸隠連峰の険しい山容。山体は浸食に対して強い安山岩火砕岩類で構成され、氷食地形も確認されている。



鏡池から戸隠神社の奥社にかけての道は、緩傾斜の扇状地が広がり、滞水した場所も多く、ハンノキ林など湿生の植物群落がみられる、



ニリンソウ(キンポウゲ科)が花盛りだった。



ムラサキ科のタチカメバソウの花も満開であった。



花序は先端が丸く曲がり、ムラサキ科に多いサソリ形花序(巻散形花序)となる。



渓流沿いにはオクヤマガラシ(アブラナ科)も花を咲かせていた。丸みを帯びた小葉に分かれた葉が特徴的である。



クルマバツクバネソウ(シュロソウ科)の花。ツクバネソウの花に似ているが、子房が開花時から黒色であること、よく見ると4枚の披針形をした外花被片の間に、細長い線状の内花被片がある。



メギ科のルイヨウボタンの花。メギ科にはトガクシソウ属、ナンブソウ属、ルイヨウボタン属、サンカヨウ属など、少数種からなる遺存的な草本性の属が多く含まれる。トガクシソウ(日本固有属固有種)以外は、東アジアと北米の温帯に隔離分布を示す。ルイヨウボタン属も、アジアにルイヨウボタン1種が分布するほか、北米東部に2種がある。



ルイヨウボタンの花の拡大。花びらのように見えるのはがく片(内がく片)で、その内側にイチョウの葉のような形をした小さな花弁が6枚、着いている。花弁は蜜腺に変化している。開花後、雌しべは種子と分離、脱落してしまい、2個の球形の種子が裸出するという変わった性質がある。



戸隠神社奥社参道の随神門。300年あまり前の建立で、明治時代初期まで神仏習合の時代には、仁王門であった。



屋根の上には、オシダ?などのシダ植物やサワグルミ、イタヤカエデなどのカエデなど様々な植物が生育していて面白い。平成19年に屋根を葺き替えたようなので、15年間で成長した植物ということになる。空中湿度の高さが伺える。



奥社参道両側のスギ並木。400年ほど前に植えられたものと伝えられている。杉並木の周囲には、ウラジロモミやハルニレ、シナノキ、ミズナラ、ブナなどが混じる自然性の高い森林が51ha残され、長野県の天然記念物に指定されている。



近年、行われたスギの遺伝学的調査(木村ほか2013)によれば、戸隠神社のスギ集団は高い遺伝的な多様性を維持し、伏状更新によって再生したと考えられる個体や、挿し木苗由来と考えられる個体も見られた。自然再生と人為的植栽、および社叢として保護管理されてきた結果、スギの地域集団として遺伝的多様性が高く保たれており、遺伝資源としても重要であることがわかっている。



戸隠森林植物園内の森林。ハルニレやハンノキなどの森林が広がり、林床にはミズバショウが多い。



流路沿いにはリュウキンカ(キンポウゲ科)が多く咲いていた。



ヤマシャクヤク(ボタン科)の花。白い大型の花は野生の植物とは思えないほど華麗だ。



ツゲ科のフッキソウの花。フッキソウ属も東アジアと北米に隔離分布する植物で、北米に1種、東アジアにフッキソウを含む2種がある。穂状花序の上部に多数の雄花を、下部に少数の雌花を着ける。写真に写っているのはほとんど雄花で、4本の太い雄しべの先に茶色のやくを着け、花粉を出しているのがわかる。花序の左奥に雌花の開いた柱頭がひとつだけ見えている。

ヤセウツボの花と埃種子



4月の末、近くの公園の一角でハマウツボ科のヤセウツボOrobanche minor Sm.の花が咲いていた。原産地は地中海沿岸とされているが、世界中に広がっている帰化植物で、以前はそれほど見ない植物であったように思うが、最近はごく普通に見かける。葉緑体を持たない寄生植物で、この写真のようにクローバー(アカツメクサやシロツメクサ)に寄生しているのをよく見るが、タンポポなどのキク科の植物やセリ科の植物に寄生することもあるらしい。

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穂状花序に二唇形をした花を多数、着ける。花茎を伸ばしながら、下から上に咲き上がっていく。花に柄は無い。



植物全体に白色の腺毛が多い。花冠は薄黄色で、紫色の筋が縦に走る。がく片は5裂し、中央の1片が幅広である。



花の拡大。2-3個の球形に分かれた紫色の柱頭が、花の入り口を塞いでいる。柱頭の表面には多数の乳状突起が発達して、花粉が付着しやすくなっている。また、腺毛の先端は球になり、ここに分泌細胞がある。油分(ヒドロキシ脂肪酸またはそのグリセリド誘導体)を分泌していることが知られているが、その役割は不明である。また、ヤセウツボの根からは、アルツハイマー症の予防・治療に役立つ可能性のある成分が見つかっている。



正面から見た花。柱頭が垂れ下がるようにして、花の入り口を塞いでいるので、柱頭に触れずに花奥に潜り込むのは難しそうである。



花冠の手前側の部分を取り去って、内部をみたところ。雄しべは4本あり、子房の左右に2本ずつ並んでつく。すでにやくは開いて、白い花粉が雌しべや雄しべの柄に付着している。雌しべは先端が下側に曲がり、花粉が付着しやすくなっている。花柱は比較的、太い。

コンソール棚

雄しべの基部は黄色を帯びた蜜腺となり、多量の蜜が溜まっている。雌しべの先端は3個の球に分かれていることがわかる。



根茎は丸い塊となっている。茎は中空である。茎の下部にある葉は幅広の鱗片状である。根は太い。写真では切れてしまっているが、根茎はアカツメクサの根と繋がっている。写真に写っている赤褐色をした丸い根はヤセウツボの根である。



5月中旬。大きなヤセウツボは高さ50cmほどにまで成長していた。まだ開花が続いているが、茎の下部の花は枯れて褐色になっていた。



萎れた花。雌しべも萎れて細くなっている。



萎れた花冠を取り去ると、子房が現れた。子房は周囲の花冠に密着するほど膨れていた。



子房を縦に割ると多数の細かな種子が詰まっているのが見える。楕円形をした種子の長径は0.3mmほどしかなく、埃種子(dust seed)と呼ばれるタイプの種子である。黄色の種子はまだ未熟で、成熟すると黒褐色となる。



未熟な種子の拡大。左側から台形状に延びた側膜胎座に、多くの種子が付いている。この段階では、種子は、外側を透明な粒状の種皮細胞によって被われ、クワの実のような形をしている。細胞は1層で、黄色を帯び、その中に見える白い球形の塊が種子の中心部で、胚が入っている。種子が成熟すると、表面にある透明細胞は乾燥してつぶれ、隣り合った細胞間の細胞壁だけが壁のように残り、種子の表面にハチの巣状の構造が形成される。写真下側の黒っぽい種子が、成熟しつつある種子である。



子房の横断面。4個の側膜胎座(白矢印)に多数の種子が付いている。種子の表面には、ハチの巣状の構造が発達しつつある。子房壁は2本の溝の部分で(赤矢印)で裂けて、種子を出す。



採取して10日間ほど放置しておいたら、子房の側面が2か所で裂けて、中から多数の種子がこぼれ落ちた。種子が付いていた側膜胎座もよく見える。



種子の拡大。種皮表面のハニカム構造がよく見える。また、種皮はやや褐色を帯びた透明であるため、裏から光を当てると内部が透けて見える。胚を含む種子の中心部は楕円形で、薄い風船状の種皮で周囲を包まれた形になっている。

寄生植物であるヤセウツボは単に葉緑体を持たないというだけでは無く、寄生植物特有の花や種子の形を持っている。まず、種子は埃種子と呼ばれる微小な種子で、ヤセウツボを含むハマウツボ科などの寄生植物やヒナノシャクジョウ科などの腐生植物(菌類に寄生する植物)、幼植物の生長に菌類との共生を必要とするラン科植物で広く見られるタイプの種子である。

ヤセウツボがどのようにしてアカツメクサなどの植物(宿主)に寄生するのか、そのプロセスは、最近の研究でかなり解明されている。ヤセウツボの種子は休眠性を持つが、適当な水分と温度があると休眠が解除される。その時に、種子の近くに宿主となる植物の根があると、根から分泌される発芽誘導物質を感知して発芽し、吸根と呼ばれる特殊な根を宿主の根に伸ばして内部に侵入し、宿主の根から養分や水分を奪って成長していく。しかし、この発芽誘導物質は土中で分解しやすく、またヤセウツボの種子は極めて小さく、吸根を伸ばせる範囲が限られるので、宿主の根はヤセウツボの種子の極めて近い場所(5mm以内と言われている)に存在しなければならない。ヤセウツボは、初期から宿主に頼って成長するので、胚乳や子葉に養分を蓄えておく必要は無く、種子は微小なものでよい。一方、散布された種子が宿主の根のすぐ近くに落ちる確率は極めて低いと考えられ、そのチャンスを掴むためには、大量の種子を広範囲に散布しなければならない。埃種子と呼ばれる微小な種子はこのような生態的条件を解決するための戦略として、寄生植物やラン科の植物で進化してきたものだと考えられている。

埃種子は、単に微小なだけでなく、形態的にも種子の散布力を高めるための性質が進化している。その一つが、ヤセウツボでも見られる種子表面のハチの巣状構造(ハニカム構造)である。この構造によって種子は表面積を増やし、種子が落下する際の空気抵抗を強くして、落下速度を低下させていると考えられている。極めてよく似た表面構造はハマウツボ科などの寄生植物だけでなく、ラン科、イチヤクソウ科、ツツジ科、モウセンゴケ科など微小な種子を作る植物で広く見られることから、様々な系統で並行的に進化してきたと考えられる。埃種子の中には、他の方法、例えば、ラン科のシランのように、小さな胚を、細長い捻じれたこよりのような種皮でくるむことで散布力を高めているものもある。

したがって、ヤセウツボの種子は基本的に風散布に適応した形をしているが、具体的にどのようにして散布されているかは、ほとんど調べられていない。土と一緒に動物に付着して運ばれたり、昆虫や小動物に食べられることで運ばれている可能性もある。

また、多数の種子を作ることにも生物学的な難点がある。種子は、原則として1個の花粉と1個の卵細胞の受精によって作られるものなので、多数の種子を作るためには多数の花粉を受粉し、その花粉管が卵細胞の所まで伸びていって受精しなければならない。ヤセウツボは主に自家受粉によって受精し種子を作っているとされるが、多数の花粉を受粉することが必要なことに変わりはない。やや小型の花であるにもかかわらず、表面に乳頭突起が発達した巨大な柱頭を持つのは、多数の花粉を受粉するためだろう。他の寄生植物や腐生植物、例えば同じハマウツボ科のナンバンギセルやツツジ科のギンリョウソウを見ても柱頭は巨大であることから、多くの寄生植物が巨大な柱頭を持つことがわかる。

一方、ラン科の植物は、多数の花粉をパッケージ化した花粉塊を、昆虫によって他の花に運ばせるという巧妙な受粉システムを進化させることでこの難点を克服したといえる。ラン科では、さらに雌しべと雄しべが合体して太いずい柱になることで、花粉管の伸びるスペースも十分に確保し、多数の花粉と卵細胞が受精することを可能にしている。

ヤセウツボは、主に自家受粉によって種子を作るとされているが、蜜腺があって多量の蜜を出していることからすると、昆虫によって他家受粉する可能性もありそうだ。自生地であるヨーロッパでは、時にハチによって訪花されていることが観察されている。

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マユミの花



コマユミの花の後を追うように、同属のマユミEuonymus sieboldianus Blumeの花が咲き始めた。この種は雌雄異株でこの株は雌株である。とてもたくさんの花を着けている。



雌花の花序。花序はコマユミと同じく二出集散花序だが、分枝を2、3回繰り返し、花数が多くなっている。



こちらは雄株の花で、花数は雌株よりも少ないように思える。



雌花の拡大。4個ある雄しべの柄は短く、黒紫色のやくは閉じたままで花粉を出さない。中央にある雌しべは長く伸びて、先端は雄しべよりも高い位置にある。雌しべの基部は円錐状に膨らんでいる。



上から見た雌花。がく片、花弁、雄しべが45度ずつずれて配列する整った放射相称花である。花盤や花弁の基部には蜜が光って見えている。



こちらは、雄花。雌花よりも花弁が細く長い。雄しべの柄は長く伸び、やくが裂けて黄色の花粉が出てきている。



雄花の中央部。蜜で濡れている。雌しべの基部はほとんど膨らまない。



雄花の蕾。蕾は小さなうちはがく片に包まれているが、大きくなってくると花弁に包まれる。



開き始めた雄花。雄しべのやくはまだ開いていない。


マユミの性表現については、雌花と雄花が別株に着くと書かれたものや、雄花を着ける株とと両性花を着ける株があると書かれたものがあり、情報が混乱している。これは、雄花も雌花それぞれに、少し形は異なるものの雄しべと雌しべの両者が着き、機能的に退化しているだけなので、混乱しているのだと思われる。また、雄花は通常、実らないが時に少数の果実を着けるものがあるようで、実態としても雌雄の分離が不完全であるらしい。
プロフィール

Author:forestplant
博物館で植物系の学芸員をしていました。大きな樹や森が好きで、その生態について研究してきました。最近は、デジカメなどテクノロジーの進化によって、誰でも簡単に、様々な観察をして、わくわくするような発見をすることが可能となりました。そんな、植物観察の楽しさを発信していきたいと思います。
なお、本ブログの文章、写真の無断転載を禁じます。

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